終活関連公正証書 尊厳死 死後事務
1 終活あれこれ
終活という言葉が流行語のようによく使われるようになりました。
終活には、財産を相続人等に適切に配分することばかりではなく、終末期医療への備え、葬儀埋葬からお墓の管理、未払いの債務の整理、身のまわりの物品や住居の整理処分のことなどいろいろなことが含まれます。これらのうち財産に関することの多くは遺言や信託で相当程度カバーすることができますが、終活には、お金だけでは、簡単に解決のつかない事柄も多く含まれています。
この章では、公正証書を活用することによって、これらに対処する方策について紹介していきたいと思います。
公正証書というと財産に関することを記載して証明するものというイメージが強いかも知れませんが、財産以外のことについても、効力を発揮する場面が多くあります。終活に関しても、以下の記述を参考に大いに有効活用していただきたいと思います。
2 終末期医療への備え 尊厳死宣言について
尊厳死宣言公正証書は、自分の終末期医療の在り方に関し、過度の延命措置は不要であるなど自分の思い、信念を宣言し、医師等の関係者に対し、自分の思いや信念の尊重を呼びかける内容の公正証書です。公正証書の上では、事実実験公正証書として、公証人が終末期医療に関するその人の宣言内容を公正証書に録取するという形式を取ります。
医療に臨むにあたり、自らこの公正証書を所持し、あるいは、信頼できる家族等に託すなどしたうえ、担当医に公正証書を示してその尊重をはたらきかけるなどの利用方法が考えられます。
尊厳死宣言公正証書 (2022-08-24 ・ 42KB) |
3 葬儀埋葬、お墓の管理(祭祀主宰者の指定)
自分の葬儀を主宰する喪主をあらかじめ決めておきたい、葬儀後の埋葬と、位牌、仏壇やお墓の管理について、信頼できる誰かに託したうえで、安んじて人生の最期を迎えたいという場合には、どんな方法があるでしょうか。
民法という法律では、被相続人(遺言者)の指定によって、葬儀を主宰する喪主や、位牌、仏壇等の祭祀財産やお墓の所有権を承継し、管理を行なう者を定めることが可能とされており、この指定のことを、「祭祀主宰者の指定」と呼んでいます。
祭祀主宰者の指定は、自分の死後に関することですので、遺言、特に公正証書遺言によって指定が行われることが最も多いと思われます。
お墓や位牌、仏壇の管理所有をめぐって、相続人の間で深刻な争いとなってしまうことは、案外多いと言われております。公正証書による遺言によって、祭祀主宰者の指定を明らかにしておくことが、このような争いを防止する決め手となるものと思われます。
4 各種死後事務の委任について
人が亡くなった後には、役所への死亡届の提出や葬儀埋葬をはじめとして、未払い債務の弁済、未収債権の回収、年金や保険関係等の精算、遺品や住居の整理など様々な事務の処理が必要となります。このような死後に残る各種事務の処理を、あらかじめ信頼できる誰かに託しておきたいと考える場合には、自分が生きている間に、死後事務委任契約を締結しておくことが必要となります。
死後事務委任契約は、それだけ単独で締結される場合もありますが、遺言や任意後見契約とともに締結される場合が多いといえます。
例えば、自分の生前に関することについては、移行型の財産管理委任契約及び任意後見契約(移行型については、「任意後見で老後の安心!」の章の4を参照してください)を締結し、死後に関することについては、遺言だけでなく、死後事務委任契約を併せて締結するという形で、利用されます。任意後見契約等の受任者と死後事務委任契約の受任者は、同一人物又は団体であることが多く、その受任者(団体)に財産を相続させるという内容の遺言と同時に行われる場合が多くあります。
人生の終幕を控え、体力の低下による財産管理能力の低下に対しては財産管理委任契約によって、認知症による判断能力の低下に対しては任意後見契約によって備え、死を迎えた後の整理については、遺言ばかりでなく、死後事務委任契約によって対処するという賢明でリスクの少ない方法を選ぶ方が増えているように思われます。
立つ鳥跡を濁さずという言葉があります。そのような清らかな旅立ちのためにも、死後事務委任契約を一つの選択肢として考慮してみてはいかがでしょうか。
以下に、死後事務委任契約を、財産管理等委任契約及び任意後見契約と併せて締結する場合の公正証書の文例を参考までに掲げておきます。参考にしてください。