離婚時の取り決めも公正証書で!
1 離婚に当たっての取り決め
協議離婚は、届出によって効力を生じます。
離婚に当たっては、届出をする前に、子の親権者を父母どちらにするか、親権を持たない親と子との面会交流に関する事項、さらには養育費の分担等について協議でしっかりと定めておく必要があります。
また、離婚に伴う財産分与や年金分割、慰謝料の支払いその他の離婚後の生活の安定を確保したり、離婚に関する責任の所在を明らかにするために必要な事項を協議で定めておく必要もあります。
2 婚姻中の約束の拘束力と公正証書
民法という法律では、夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも夫婦の一方から取り消すことができるとされているのをご存知でしょうか。この定めは、婚姻関係が実質的に破綻しているような場合は適用されないとされていますが(最高裁判所の判例)、離婚に当たって、離婚後の親権の所在や養育費の分担、財産分与、慰謝料の支払等について合意をするような場合は、この判例が適用され、形式的に婚姻中であっても一方的に取り消すことはできない場合に当たると考えられます。
しかし、本来、夫婦間でした契約には、法律上、微妙な位置づけが与えられており、法的保護も薄いことを考えると、離婚を前提とした取り決めも、単に夫婦間で書面を取り交わしておくというだけでは到底安心できません。後になって効力が争われる危険性も高いことは明らかです。
そこで、離婚後のこうした取り決めは、公正証書にしておくのが、賢明、適切なやり方です。公正証書は、公的な立場にある法律専門家の公証人が法律で定められた厳正な手続で当事者の意思を確認しながら作成するものであり、単に当事者間で契約書を取り交わしたのみの場合と比較すると、絶大な証拠としての力があります。
3 公正証書の効力
養育費や財産分与、慰謝料の支払いについて、公正証書で確定金額を定めて支払い約束をし、約束不履行の場合は強制執行を受けることもやむを得ないという条項を入れておけば、後日、不履行となった場合に、その公正証書に基づいて直接強制執行を裁判所に求めることができるという効力があります。
この点も、公正証書で離婚給付について定めておくことの大きなメリットです。特に、養育費に関する強制執行については、法律上、他の一般の債権よりも優遇されており、公正証書で定めておくことのメリットは大きいと思います。
また、厚生年金法に基づく年金分割の定めについても、法律上、公正証書による合意の手続きが厚生年金法で定められていることから良く利用されています。
養育費や慰謝料、財産分与等について、離婚後に合意を公正証書にすることももちろん可能ですが、離婚後では、うやむやにされてしまう危険性が大変大きいことに注意してください。離婚の届け出を出す前に夫婦間の合意内容をきちんと公正証書にしておくことを強くお勧めします。